海外展開伴走支援の3類型
主に今までの公的支援の海外展開支援は、軸足があくまで日本企業中心です。海外に投資して子会社を設立する支援であったり、輸出10000者プロジェクトというような輸出支援のように、日本から外へ向けた発想からのものでした。これは日本の税金を使って無料で行う支援ですから、ある面仕方がありません。
しかし、日本を中心に外へベクトルを向けた支援では本質からずれていると感じています。海外展開支援ではグローバルな視点で制度設計しないと効果的にはなりません。日本企業に補助金を交付したり、日本企業が海外で開催する展示会を支援したり、マッチングイベントをやったりするのが精一杯です。
商談を案件化する支援を継続的に伴走する仕組みが弱いと感じます。グローバルに成長発展したいという企業からの相談に対して、公的機関が独自に取り込んだ専門家を担当につけて支援しても、企業と専門家の相性がずれていたり、専門家の支援範囲も制約が大きく、的確な支援が行き届いているとは感じないことが多いです。
日本企業が海外に向けた取組み中心の伴走支援では不十分です。むしろ、海外企業をもっと日本市場に誘致し、日本市場の販路開拓支援や人材雇用支援など、海外企業による日本市場でのインバウンド事業に対する補助金制度の拡充や、法人設立やマーケティング強化のために、日本市場での外資への専門家支援も必要です。
外国企業になんで日本の税金を使うのかという批判もあるでしょう。しかし、外国企業が日本で事業を展開することで、日本企業が鍛えられ市場も活性化し、人的資源も充実するメリットもあります。当然の結果として、脆弱な日本の中小企業だけでなく、いい加減な経営を行う外資企業も退出することも多くなるでしょうが、国籍に関係なく日本で事業を行っている企業によって産業基盤が強化されるのは大きなメリットです。
つまり、日本企業の海外展開支援とともに、外国企業の日本展開支援のニーズに対して、国際派の診断士がもっと頑張らないといけないと感じます。日本企業と外国企業がお互い連携することで、経営資源の相互補完による相乗効果も期待できますし、日本市場だけでなく海外市場でも新たな共同事業に踏み出すことによって、グローバル成長の可能性が広がります。
日本の中小企業の最大の問題は、「日本人による日本企業が日本市場で頑張るビジネスモデル」から踏み出せていないことにあります。外国人労働者の活用の幅は広がっていますが、それはあくまで日本という土俵での相撲を取っているレベルから抜け出ていません。
日本企業が真にグローバル市場に打って出ていかないと、人口減少が加速する今後、企業の競争力もどんどん低下し、日本の市場も縮小、次世代に引き継ぐ産業インフラとしての企業がもはや存続しえない事態に直面していると思うのです。
したがって、今後海外展開支援コンサルティングの存在価値は、①日本企業の海外進出支援と海外市場開拓のための輸出促進の支援、②外国企業のインバウンド日本進出支援、③日本企業と外国企業の提携や共同事業の支援、および海外事業視点のM&A戦略支援、の3つのカテゴリーに類型に分けられると考えています。
その視点からは、今までの国の補助金行政の在り方を見直すべきです。
企業側が認定支援機関と一緒に策定した海外展開や外資によるインバウンドの事業計画、提携事業やM&Aを実施するためには、認定支援機関による専門家経費だけを補助するのが一番効果的かと思います。
現在のいろいろとある補助金の経費や使途を、あまりにも細かく条件化していることで、企業活動自体を制限しているため、日々流動している外部環境の変化に機動的に企業活動を支援するような制度にはなっていないのが大変残念です。