どんどんハードルが上がる複雑怪奇な補助金制度

令和6年度の大阪府新事業テイクオフ支援事業で、2社の伴走支援パートナーとして昨年8月から2月末までの7か月間、新規事業取組みを機に成長発展に向けて一緒に走り抜けました。

大阪府が数年前から実施しているこの支援事業は、企業支援を行っている支援機関の立場から見ても、税金の使い道としても支援効果の高い有益な制度であると実感するものでした。

国や公共機関が実施する中小企業支援は、政策投資による効果を机上で考えがちで、実際に企業のニーズにあったものかはやってみないとわからないものが多いと考えているのではないかと感じています。官僚が頭で考えて社会的に支援効果があるはずであると考える取組みを、補助金申請の計画でうまくまとめてきた企業に補助金を支給したり、無料でセミナーや展示会支援、マッチングイベントといった、パターンの決まった政策ばかりで本当に政策効果があるのか疑問に感じていました。常々感じるのは、官僚は企業経営は生き物であるという感覚が全くないのかなということです。

最近の補助金申請の複雑さ

多くの中小企業から補助金に関して良く聞く声として、「公的機関による情報提供は有益なものが多いが、それぞれの支援機関が年度ごとに縦割りで契約した専門家によるアドバイスや展示会・商談会支援は、単年度ベースで継続的に支援が続かないし、アドバイスも表面的で個別の事業に適したものでないのが不満。自社の事業展開を支えてくれるには、使途の自由度が高い補助金+専門家による継続的伴走支援が最もありがたい」があります。

特に昨今の補助金の種類はやたらと増えていて、重複したり補助金制度間で予算の付け替えをしたりしていると思われるのですが、正直企業経営者としてはどの補助金が一番自社にふさわしいのか判断が難しいですし、上から目線で補助金公募要領を公的機関のウェブに乗せているたけで、広報の努力はほとんどせずに、その割には申請条件のハードルは年々ものすごく複雑かつ高くなっていて訳がわからないというものが増えてきています。

特に今年の補助金を見てみると、賃上げ条件(総人件費額の伸び率や最低賃金よりどれだけ高いか、付加価値の伸び率ななど)がこれでもかというぐらいハードルが高くなってきていて、賃上げが平均以下のような企業には補助金申請の資格なしと門前払いしているような印象です。

また国の政策をやたらとぶっこんできています。経済産業政策に沿った条件であれば何とか理解はできますが、一方で審査の加点項目に女性活躍とか、働き方改革、次世代育成、少子化対策への企業としての活動計画に入れ込んできているのです。実質、加点項目と言っても、適合したら良いというレベルではありません。今公募中の第19次ものづくり補助金に至っては、なんと加点項目は全部で15項目もあり、最大6項目について加点の申請が行うことが可能とされています。この中に、パートナーシップ構築宣言とか、えるぼし認定とか、くるみん認定とか、健康経営優良法人認定、技術情報管理認証、事業継続力強化計画(いわゆるBCP認定計画)等に加え、中小企業庁がやろうとしている成長加速マッチングサービスへの会員登録など、補助金制度の本来の目的から大きく踏み外しているとしか思えない条件が増えているのです。もっとシンプルにすべきではないでしょうか。

正直なところ、今の中小企業の経営者が自分自身でこれだけの条件をクリアする準備と、一人で事業計画の策定と申請ができそうな方に出会ったことがございません。しかも、申請のためのGビズIDを他人に開示して他の誰かが申請すると不正申請にあたるのですから要注意です。今の申請はほとんどがウェブ申請に変わってきていますので、申請入力時のIPアドレスが複数件の申請に同じものが使われているかどうかを事務局はAIにサーチします。もし一つのIPアドレスで複数の申請がされていた場合、同じ社内での重複案件の申請という疑いがかかり、これが判明しますと申請条件違反として審査対象外となります。また全く異なる企業で同じIPアドレス申請が見つかった場合、コンサルタントなどの支援機関が申請代行を行った疑いで、GビズIDを他人に使わせたということが判明しますと、企業も支援コンサルタントも不正申請として摘発され、社名公表などの罰則を受けたり将来の補助金申請の資格を失うことになるのです。

大阪府新事業テイクオフ支援事業は国の補助金制度とどう違うのか

自社の事業展開を支えてくれるには、使途の自由度が高い補助金+専門家による継続的伴走支援が最もありがたいという企業の声を反映した支援制度の一つに、この大阪府新事業テイクオフ支援事業があります。

令和6年度では、新事業に取り組む企業に対して、300者を対象に補助金100万円、100者を対象に認定経営革新等支援機関が伴走支援するという制度です。伴走支援には補助金は出ませんが、補助金との重複申請が可能であるため、伴走支援に採択された企業の多くが補助金100万円も同時に採択されています。補助金はもらえるけど伴走支援がないという企業(最初から補助金申請だけもありますが)が200者程度あるということになります。

採択率は3割程度で結構厳しい競争率となっていますが、企業にとっての最大のメリットは、補助金だけもらえる制度ではなく、その補助金を使って新事業をテイクオフするための伴走支援を認定経営革新等支援機関から7カ月間にわたって受けられ、補助金を出す大阪府としても、その補助金が有効に活用されているかどうかを定期的にモニタリングできるという制度です。しかもその伴走支援にかかる専門家の報酬は、大阪府が事務局を通じて月次報告の義務を負う専門家に直接支給されるので、企業としては補助金ももらえ、かつ支援を実質無料で受けられるので、これほど企業にとって有益な支援制度はないと思うのです。

しかも、採択後に全く知らない認定支援機関の専門家がつくのではなく、認定経営革新等支援機関の専門家を指名して申請することが可能なのが大きな魅力です。もちろん企業による認定支援機関の指名なしに申請も可能ですが、採択されたら知らない専門家が就くわけですから、企業経営者と専門家の相性もあるでしょうし、結構事業支援では難しい取組みになる可能性はあります。

日頃、認定支援機関の専門家とやり取りをされていて、その専門家と一緒にこの補助金申請を行うのであれば、申請に関する新事業の目的や取組みなど、審査内容に対する訴求点もクリアであり、採択される率は遥かに高いと言えます。

私が支援した2社に対しては、最初から企業に制度の仕組みと申請のポイントや条件を詳しく説明したうえで、補助金+伴走支援のスキームを作り上げて申請しました。もちろんGビズIDを私がログインするような代理申請はしませんが、実際には企業と事前段階から何度も打ち合わせを重ね、もちろん申請原案は共同で作成し、申請手続きの入力では社長のパソコンの横に座り、社長のIDでログインして一緒に確認をして進めたわけです。

そこまで支援できる伴走者としての自覚を持って申請するのですから、不採択となった場合でも一切費用はいただきません。また採択となった場合は、補助金額に対する成功支援報酬として、最終事業が終わって補助金が支給された後にいただくという形にしました。さらに伴走支援では一切企業からの負担は求めませんでしたので、企業にとっては完全にノーリスクで、費用は全く発生しないという夢のような支援制度であったのではないかと思います。

令和6年度では3社で補助金+伴走支援の申請を行い、そのうち2社で採択されたのは、制度全体の結果からみると高い採択率であったと思います。そして、7カ月間の伴走を、日数でいけばそれぞれ累計40日の支援を行い、補助金も支給され大変喜んでいただきました。

令和7年度の新事業テイクオフ支援事業の希望者を先着順で募集

令和7年度も当事業は実施される見通しです。事務局から伺った範囲では、申請希望者が多いために補助金の採用者数を増加させるかも知れないようですが、伴走支援の100者の枠はおそらく増えないのではないかと感じています。

私自身は補助金200者、伴走支援200者の方が効果があるとは思いますが、なかなか伴走支援の活動は表に数字として出にくいことから、100者を増やすということにはなっていないのが少々残念なところです。

いずれにしましても、令和7年度の公募は5月ぐらいからあると思われます。令和6年度の例では、公募締め切りが6月末、審査結果が8月上旬で支援事業開始となると予測しています。

もしご関心のおありの企業様がおられましたら、是非一報いただければご支援可能かどうか打ち合わせさせていただきます。不採択となっても費用はいただきませんので、私自身も納得できる申請支援でない限りはお断りさせていただきますし、基本的に補助金だけでなく伴走支援との一体支援を考えております。ご希望によっては補助金支援だけでも可能かどうかも検討させていただくこともございます。

皆様のお問い合わせをお待ちしております。

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