企業の存在価値と人生の目的は同じ

皆さんは何のために働いているのか真剣に考えたことがありますか?
「勿論だ、いかに楽してお金を稼いでいい生活をするためじゃないか! 楽して儲かれば何でもいいんだよ」・・・昨今、不労所得を得て楽な人生を送るのが目標といって憚らない人が増えてきたような気がします。
闇バイトに引き込まれて安易に犯罪に手を染めたり、人を騙してとにかく金儲けさえできればという悪徳な事業者が増えてきています。
私が大学を出て社会人になってから、自分なりの人生観に大きな影響を与えたのが、勤務先の創業者でありました松下幸之助翁の経営理念でした。
企業にとっての経営理念は会社が何のために存在しているかという価値そのものです。けっして利益を上げる、つまりお金儲けのために会社があるとするならば、何をやっても良い、会社の利益になるのなら人を騙しても構わないという経営になってしまいます。
理念なき組織は、会社であれ、政党であれ、メディアであれ、社会に存在する価値は全くありません。皆さんが働いている職場に理念がなければ、個人にとっても日々の労働は、単に賃金を得るために時間を売っていることになり、それこそ社会に価値を生まず迷惑をかけるような仕事に加担することに他なりません。
つまり、働いている企業や組織の存在価値は、即ち個人一人ひとりの人生の目的と切り離せないと思うのです。
松下幸之助の経営理念を簡潔にまとめると
松下電器を創業した松下幸之助翁は経営の神様と称され、様々な経営の考え方についてまとめており、経営書として数多くの書物として残されています。松下電器の社員も経営理念研修や日々の業務を通じて、経営について勉強させられます。ただ、様々な言葉で残されていますので、体系だって簡潔に学ぶには大変です。
私の大先輩でパナソニックの役員をされた方がAIを駆使して松下幸之助の考え方をまとめられました。非常に単純かつ納得いくまとめになっています。
松下幸之助の経営理念は、「企業は社会の公器である」という考えを基に、人間性を重視し、社会全体の繁栄と幸福を追求することを目的としています。彼は企業の役割を「人々の生活を豊かにし、社会の発展に貢献すること」と捉え、利益はその結果として得られるものだと考えました。 彼の理念の中心には「素直な心」「生成発展」「調和の本質」「人材育成」「社会への貢献」の5つの要素があります。「素直な心」とは、私心を捨てて広く学び、真理を追求する姿勢です。「生成発展」は、日々新たな創意工夫を重ね、限りない繁栄と幸福を生み出す考え方を指します。「調和の本質」は、自然の秩序に従い、人と社会の調和を大切にすることを意味します。
松下幸之助翁が社内で常に強調していたワードが全て包含されています。企業は社会に貢献することこそが存在価値そのものであり、利益は貢献の結果であるということに尽きると学びました。こうも言っていました。「赤字は罪悪である。なぜなら社会の資源である人材をお借りし事業をさせていただいて新たな価値を生むべきところ、赤字を出しているというのは社会に貢献できていない結果にすぎないからである」
さて、改めて後輩の皆さんに問いたいことがあります。皆さんの会社の存在価値は何ですか? 皆さんは何のためにこの世に生まれてきたのでしょうか?
創業者が経営理念を次世代につないでくれたからこそ、私たちは人に恵まれ価値を創造することができた結果、今の会社の姿があるのです。両親が出会ってくれたこそ、その両親を生んでくれた祖父母が激動の時代を生き抜いてくれたからこそ、私たちは今を生きているのです。私たちは、これから生まれ来る子どもたちの世代につないでいくことよりも、自分が好きなライフスタイルを楽しんで生きる権利の方が大事であるという錯覚に陥ってはいないでしょうか。
松下幸之助翁の経営理念は単に会社経営の考え方をまとめたものではありません。社会の発展のために会社だけでなく人間としてどうあるべきかを説いています。
今の会社の経営がうまくいかない場合や、人生の目的を失ってしまったとき、社会や周囲のせいにしてはいないでしょうか。全てはこの世での会社の存在価値や自分自身が生まれてきた理由に気づいていない「素直なこころ」の欠落に原因があると思うのです。