食品業界がグローバル成長発展を目指す課題

顧問先企業の食品業界での販路拡大を支援する取組みで、昨年に引き続き幕張メッセで開催されたスーパーマーケット・トレードショーのブース出展で3日間通しで出展者スタッフとしてお手伝いをしてきました。ほとんどの時間をブースでの来場者対応に費やしていましたので、他の出展社ブースを幅広く見て回ることはできなかったのですが、全体で2千数百社以上の出展社・団体の参加で8万人規模の来場者で、日本での食品関連の展示会としては最大規模です。2年連続で当展示会に支援者の立場で参加し、食品業界全体の課題について改めて感じたことがあります。
私の専門支援の中心となっている一般製造業は比較的製品カテゴリーごとに縦軸で分業構造で成り立っています。テクノロジーやものづくりといった供給サイドが市場を創造し、流通は製品特性に沿ってエンドユーザーと製造者を最適化して繋いでいく要素が強いと言えます。
一方、食品業界は製品カテゴリーも製造者も個人から地域小規模の名産品、農産従事者から大企業まで無数といっても良いぐらい広範に存在しています。むしろ事業が成功するかどうかは業界全体の成長をけん引している流通網にあると言えます。
あまりにも製品数が多いため、メーカーにしろ流通にしろどの分野に特化して差別化を図るかが極めて重要です。たとえ小規模商店であっても、比較的出店数の多いスーパーであっても、それぞれが何千何万点の商品を個別に発注して仕入れることは困難であるため、売れ筋商品の開発だけでなく日々の売上促進支援から受発注業務、物流、在庫運用まで、売上を最大化する「帳合」と言われる卸事業者の存在が業界構造として特徴的です。
食品業界の卸事業者が市場を創造し、地方の名産品など小規模生産者を多く生み出し、舌の肥えた消費者の需要を喚起する貢献を果たしてきたと思います。しかしそのために日本の消費者に刺さる商品戦略に偏重してきたことも否めず、結果として巨大かつ成長しているグローバル市場よりも日本市場のみでしか勝負できない業界構造となってきていなかったのではないかと感じます。
食品業界が海外市場に挑戦するために
大手の卸事業者には上場企業や旧財閥系企業グループ企業もあり、食品の海外展開を自ら展開しているところも存在しています。日本の飲食店チェーンレストランも海外で出店拡大をしていますし、海外でも日系スーパーマーケットの増えています。
ところが食品製造事業者レベルで出展者の展示を見た場合、9割ぐらいは日本市場向けしか扱っていませんでした。特に感じたのは、地方の県単位のブースで出展している地域の名産品やこだわり食品といった展示商品では、ほとんどが日本の消費者しか見えていないと感じました。
来場者の中には海外で通用する商品を発掘して、海外に越境ECで売れそうなものをソーシングしている輸出事業者や海外のバイヤーも結構目立ったのですが、一方で日本の卸事業者で海外向けで拡大できそうなものを探している方はあまりいなかったように感じました。
興味深かったのが農水省の関連団体が出展していたブースで、加工食品輸出事業者のための海外食品安全規制に関する展示で、元大手食品メーカー出身の方からお聞きしたことでした。
ーーーー
「食品業界で海外の取組が遅れているのは、農水省に海外市場を熟知したいわゆる経営の経験者が極めて少ないためであり、特に地方の農水局では海外展開を支援できる人材もノウハウもほとんどないのが実態です。実際、食品業界の海外事業は、国や公的機関による支援体制がないので、大手食品製造企業が独自で積み上げてきたものである。日本の食品は十分海外市場で勝負できるし魅力的なものがあり有望である。しかし個々の県単位でいくら展示会出展しようが、小規模の食品企業の海外展開を経営的視点からサポートする伴走支援体制がほとんどない。」
ーーーー
この方と結構話したのですが、海外展開戦略における公的機関による支援体制としては、ジェトロを筆頭に経済産業省系の多くの支援ノウハウは幅広くあります。経産省では海外展開事業計画の策定や実践を伴走支援する診断士などの人的支援や補助金制度があるものの、農水省の支援体制は相対的に国内の保護政策に比重がかかっているため、成長戦略という点で経産省と連携できるような支援政策があれば海外市場で成長発展できると思うのです。
高市内閣の成長戦略17分野の中に「 フードテック」があり、スマート農業・農地大区画化・完全閉鎖型植物工場・陸上養殖・食品DXが掲げられているのですが、どちらかというと食の自給率向上やデジタル化といった側面が強調されています。しかし成長戦略としては日本の強みを生かしていかに海外市場で成長と収益を最大化するかといったより経営実践の感覚が欠けている点が否めません。テクノロジー投資だけでなくマーケティング投資の観点がより重要であると感じた今回の展示会でした。

