外国人問題と企業の海外展開の方向性

外国人の移民増加が引き起こす急激な社会変化と混乱をもたらす問題が顕著になってきています。政府は表向きには日本はまだ移民政策を導入していないと言いますが、少子化加速に伴う労働力不足を補うべく、実質外国人労働者が急増していることは事実であり、外国人観光客が引き起こすオーバーツーリズムが深刻な社会不安を引き起こしています。
「少子化で労働力が不足しているのだから外国人労働者なしには企業経営が成り立たない」「外国人観光客によるインバウンド需要が消費拡大に貢献している」として、企業経営者や政府関係者の多くで、外国人の労働力と消費に依存している傾向が顕著です。
ただ物事にはプラスとマイナスの両面があります。ノービザや観光ビザでの訪日外国人がオーバーステイで不法在留して難民申請して居続けたり、法律やルールを守らない外国人による犯罪が増えていることで社会不安を感じている国民が確実に増えています。
既に欧州では移民問題は深刻な社会暴動を引き起こすほどになっています。行き過ぎたグローバリズムによる移民問題が社会混乱を生じるのは確実です。日本はまだ間に合うと思いますが、欧州の現状やトランプ関税問題や、とりわけ中国による経済侵略の動きをもっと正面から捉えるべきであり、その典型的な切り口が外国人問題への対応になると思うのです。
その結果が既に既存政党や政府への批判の高まりであり、新興保守政党の支持拡大につながっています。国民の声は、増税への怒り、外国人問題への対応、物価上昇への対応が中心であると思います。それらの声に耳を傾けていない結果が与党の惨敗となっているのに政府与党は真剣に受け止めていないように感じます。
外国人問題に企業経営者として考えるべき視点
外国人問題を考えるときに欠けている視点があります。海外との経済関係には、いわゆる「輸入のインバウンド」と「輸出のアウトバウンド」「対外投資のインベストメント、そして「提携のアライアンス」の4つのカテゴリーに分けられます。
ところが今、経済界や政界も、少子化が引き起こしている労働力不足と需要不足の問題を、外国人の労働力と消費によって解決を図るために、日本国内に外国人を引き入れる「外国人のインバウンド」の視点しか持っていなような気がしてなりません。
日本経済は、高度成長時代から質の高い労働力と技術力で生み出した製品を海外市場拡大、つまりアウトバンドで成長発展してきました。その後円高対応を機に海外投資によって製造拠点の現地化で海外での事業拡大を図り、配当収益やサプライチェーンのグローバル化で海外で儲ける体制を築き上げました。
そして日本国内での労働力不足やものづくりの現場が海外に移管したことが要因となって海外経営力の低下からグローバル競争力を失い、国内市場での高付加価値化に特化したことで、中韓などとビジネスボリュームで勝負できなくなってしまいました。製造を支えてきた匠の技術を継承してきた人材も現場からいなくなり、ものづくりは委託生産などアライアンスにシフトしてしまっています。
それだけに留まらず、新市場に新製品で事業再構築しようにも、国内市場とくにインバウンド消費に期待するしかなく、国内市場対応のための労働力も日本人だけではいかなくなってことで、外国人労働力に頼らずになってしまっているのではないでしょうか。
この閉塞感を打破するためには、今一度日本企業は海外事業を軸に再構築する視点を持つべきだと思うのです。
労働力を輸入するのではなく海外で活用するビジネスモデル
企業経営では外国人労働者なしにはやっていけないし、もっとインバウンド需要に対応するビジネスモデルを再構築したいという考える経営者が多いと思います。
成長発展のために海外で市場拡大を図るビジネスモデルで競争して勝ち残ることは企業経営にとって基本的戦略の方向性であるべきです。国内市場向けに同業他社の差別化を図るために、国内で高品質ものづくりにこだわり、そのために不足する現業人材の不足を外国人材雇用で対応する考えではいずれ行き詰るでしょう。
日本が成長発展してきた歴史を踏まえると、成長する海外市場で競争力あるものづくりによる成長戦略を実践するために、経営資源の基本であるヒト、モノ、カネ、ノウハウを海外市場で現地化していく視点を持つべきではないかと考えます。
少子化で労働力不足であるから日本での外国人雇用を拡大していくという企業ばかりだと、一時的には労働力確保に資すると思いますが、様々な社会的不安や治安問題を助長していくリスクが高くなるだけでなく、世界市場での競争力で優位性を確保することはまず無理です。
優秀な外国人材は世界中にいます。ITでもマネジメントでも、ものづくりでもマーケティング能力でも、日本人の能力が高いと言い切れないとの認識を持つべきです。そういった人材を輸入するのではなく、人材活用アウトバンドに舵を切ることで競争優位性のあるビジネスモデルにつなげることができると思うのです。
海外での事業を現地化し、海外市場を拡大している企業はたくさんありますし、企業経営のグローバル競争の現場は最早日本が舞台ではなく、海外でいかに経営資源を回して売上と利益を最大化することが経営戦略の最前線です。
日本企業は成長発展の原点に立ち返り、もう一度グローバル市場で生き残る海外展開をどう実践するために、外国人材を日本で雇用するのではなく、海外市場で活用するビジネスモデル構築を支援していきたいと考えています。


